近年、ショート動画が流行っていますよね。例えばYouTube Shorts(通称:ショート)、Instagramリール、TikTok、最近ではFaceBookも。
今回は企業の担当者向けに、ショート動画の作り方と活用法をご紹介します。
細かいテクニックよりも、より実践的な内容をお届けします。ぜひ最後までチェックしてみてください。
この記事の監修者
「動画の窓口®️」動画コンシェルジュ
池上 和
不動産営業マンから動画クリエイターに転身。現在は動画コンシェルジュ。 『動画の窓口®︎』プロデューサー。企業動画を年間約1,000本プロデュース&制作している。動画の窓口株式会社社長。合同会社イエロー代表。動画フリーランスコミュニティ「若羽-wakabane-」創業者。
そもそもショート動画とは?
ショート動画は、TikTokを始めとする短尺の縦型動画です。今ではYouTube Shorts、Instagramリール、FaceBookなどさまざまなSNS媒体で使われています。
日本でもTikTokが流行る以前からC Channelというものがありました。しかしユーザーが限定されることから、大手SNSほどの認知ではなかったようです。
ショート動画を一言で表すと「短くてサクッと見れる動画」です。
それぞれ特色や違いはありますが、どれも縦型であるため秒数によって他媒体に転用が可能であることが共通して言えます。
ここからは、以下の各媒体の秒数と表示先をご紹介します。(2023年7月現在)
- YouTube Shorts
- TikTok
- Instagramリール
- FaceBookリール
YouTube Shorts
60秒以内の縦型動画を投稿すると、自動的にShortsフィードに投稿されます。
↑画像の黄色い枠部分がShortsです。
↑画面の左下の黄色枠部分からも、Shortsフィードを閲覧できます。
TikTok
15秒、60秒、3分、10分のモードがあり、それぞれに変更が可能です。
アプリを開いた瞬間に画面いっぱいにショート動画が表示されるのは、TikTokの特徴と言えるでしょう。
Instagramリール
15分以内の動画を投稿すると、自動でリールとして投稿されます。
リールが表示される場所は主に以下の4箇所です。
- リール専用タブ
- 発見タブ
- プロフィール画面のリールタブ
- フィード
リールが15秒以下の場合は、ストーリーズにも共有が可能です。
FaceBookリール
長さは90秒以内です。Instagramと同様に、表示場所は以下の4箇所になります。
- リール専用タブ
- 発見タブ
- プロフィール画面のリールタブ
- フィード
ストーリーズに共有が可能な条件も、Instagramと同じく15秒以内です。
↑黄色い枠部分がリールとショート動画のフィードです。
Twitter (X)
投稿できる文字数の上限が140字であり、その数字に合わせて動画の長さは140秒、つまり2分20秒という設定になっています。
ただし他の媒体と異なり、フィード上で自動表示される動画の縦横比のサイズはスクエアサイズ(1:1)になるため、注意しましょう。
これからやってみようと思っている方
最初は使い分けを意識する必要はありません。現在自社で運用しているSNSで試してみるのがよいでしょう。なぜならば、難しく考えると一歩目を踏み出せないからです。
さまざまなSNSのアカウントを使い、まったく同じ動画を投稿してみましょう。異なる反応がありますし、新たなアカウント作成のきっかけにもなるのでおすすめです。ここでも再生回数を気にする必要はありません。
ここからは以下の媒体について、有効な対象者や特徴を解説します。
- YouTube Shorts
- TikTok
- Instagramリール
- Facebookリール
初めての方でもわかりやすいように詳しく解説しているので、ショート動画に挑戦しようと考えている方は、ぜひ最後まで読んでみてください。
YouTube Shorts
有効な対象者 | 10代〜50代 |
内容 | BtoB、BtoC、カジュアル、ポップ、カルチャー、ビジネス、など幅広く分布 |
ビジネス的な使い方 | ・情報の認知、拡散・啓蒙 |
メリット | ・チャンネル登録者数の少ないチャンネルでも、すぐに再生回数が稼げる・インサイトが細かく見られる |
デメリット | ・視聴後のコンバージョンとして有効なのが、フォロワーの増加のみである・既存の人気YouTuberが贔屓される |
YouTubeのショートフィードは「サービスを認知させるための無料CM」と捉えると良いでしょう。回転率が高く、チャンネル登録者数の少ないチャンネルでも2,000〜6,000程度はすぐに再生回数が稼げます。
しかし視聴後の行き先として有効なのは「本チャンネル」のみであるため、注意が必要です。公式サイトや詳細情報欄への遷移を設定することはできますが、難易度が高く、インターフェース上最適化されていません。YouTubeの本チャンネルに、コンバージョンへ繋げる動画を投稿し、チャンネルを充実させておきましょう。
また試聴維持率やライクが低い動画が続いた場合は、ユーザーにとって関心の低い動画として認識され、ショートフィードに載せてもらえなくなります。
さらに「YouTube離れ」を防ぐために、フォロワー1000人以上のYouTuberは優遇される傾向があり、新規ユーザーは多くの場合、数千再生でピタッと再生数が止まります。そのため、本チャンネルの登録者数が既に多い場合にはチャンネル登録のフックになりますが、そうでない場合は上述の通り認知拡散のためのCM枠と考えるのが良いでしょう。
ただし一般的な投稿動画とは異なり、よほど視聴維持率が高い動画でない限りは、数日間経つと視聴者に表示されなくなってしまいます。ちょっとした動画でよいので、定期的に何度も投稿することがおすすめです。
YouTubeのショートフィードは、最近では40代、50代の方にも広く視聴されているため、幅広い世代に視聴されることが期待できます。
TikTok
有効な対象者 | 10代〜30代 |
内容 | BtoC、BtoBtoC、カジュアル、ポップ、カルチャー、ビジネス、など幅広く分布 |
ビジネス的な使い方 | ・商品サービスのPR・採用活動 |
メリット | ・バズ動画の再現性が高い・動画のコメント率が高い |
デメリット | ・競争が激しい・ビジネスコンバージョンの設計が難しい |
TikTokは、縦型ショート動画の大御所です。年齢層が高いユーザーも、近年増加していますが、10代、20代が未だに多いSNSです。そのため、若者にリーチしたい場合には、TikTokを使用するとよいでしょう。
他のSNSと比較して、ユーザーとの距離が近いため、視聴者が動画にコメントをしてくれやすいです。また、200〜300再生は必ず視聴者に表示させてくれる他、比較的バズ動画を出すテクニックに再現性があるため、初心者でも参入しやすいプラットフォームです。
誰でも始めやすい反面、競争が激しいため、独自の価値やポジションを綿密に設計してネタを投稿する必要があります。インサイトは細かく見られますが、ビジネスコンバージョンの設計が難しいことは、頭に入れておきましょう。
Instagramリール
有効な対象者 | 20代後半〜50代 |
内容 | BtoC、美容、健康、飲食、子育てなどライフハック系 |
ビジネス的な使い方 | ・購買ページへの遷移・ブランディング戦略・新規ユーザーとの接触 |
メリット | ・新規フォロワーを獲得しやすい・編集に時間をかけていない動画でも拡散されるケースがある |
デメリット | ・バズ動画の再現性が低い・インサイトが見にくい |
通常のフィードがしっかりと運営されていることが条件ですが、Instagramのリールフィードでは新規のユーザーと接触しやすく、フォロワーを獲得しやすいのが特徴です。
またテロップが少なく、編集が凝っていない動画でも広く拡散されるケースもあります。
- リール=新規ユーザー獲得
- フィード=新規ユーザーからフォローされるためのプロフィール欄
- ストーリーズ=フォロワーに対してのチラシ配り
上記のような考え方がおすすめです。
ただし、おすすめ表示が恣意的であり、バズ動画の再現性が低い上に、インサイトも見にくいため注意しましょう。
通常のフィードが充実していないと、意味をなさないので、定期的な更新が必要になります。
FaceBookリール
Facebookは、友達に対して権威性を高める使い方がおすすめです。
動画を投稿することで、どのようなビジネスをしているのかを伝えたり、専門家としての意見を述べたりできます。
上記の3ツールと比較して新規のフォロワーへのリーチ性が低いのは、実名主義かつ「友達は5000人まで」という上限があるFaceBookの特性でしょう。
共通して言えること
同じ動画を上記の4媒体すべてに投稿できるため、特段の理由がない場合はすべてに投稿することをおすすめします。
SNSごとに伸びやすい動画が異なるケースもあり、バズり方もさまざまであるため、自分の動画シリーズがどのような媒体で伸びやすいのかを判断しながら試行錯誤していきましょう。
活用方法
SNSのショート動画は、フォロワーに関係なく認知を拡散できるのが特徴です。一般的な商品やサービスの購買過程は、「見込み顧客を獲得」→「見込み顧客が検討・商談」→「成約」という流れになっています。この購買過程をフェーズ分けしたものは「ビジネスファネル」としてモデル化されています。
ビジネスファネルで考えた時の「認知」の部分がショート動画に該当するため、上手に見込み顧客を獲得して、成約につなげましょう。
おすすめの商材ジャンル
ここからはおすすめの商材ジャンルについて、以下の5つに分けて、詳しく解説します。
- BtoC商品
- BtoC飲食店、その他店舗
- BtoB
- BtoBtoC
- 採用
具体例もご紹介しているので、目を通してみてください。
BtoC商品
商品使用におけるBefore/Afterを見せつつ、しっかりと商品やロゴを表示させるのがポイントです。ハッシュタグなどの独自キャンペーンや、抽選で特典が当たるキャンペーンなどを展開してみましょう。インフルエンサーが自ら商品を取り上げ、拡散してくれることも期待できます。
こちらの動画では、ファイブミニのTikTok戦略を解説しています。ぜひチェックしてみてください。
BtoC飲食店、その他店舗
サービスの魅力以上に、人や店員の個性を出しながら店舗やメニューをアピールできます。また、採用活動に活かすことも可能です。
- あるあるコント
- オリジナルコント
- 本当は教えたくない料理の作り方
- ダンス、流行りもの
以上のように、硬くなりすぎず、ユーモアを交えて展開しましょう。小規模店舗ではとにかく属人性を意識すると良いでしょう。
以下はBtoC飲食店、またはその他店舗のショート動画の例です。参考にしてみてください。
・属人性の高い例:哉月
・中規模チェーンでの例(取り扱い商品やブランディングイメージの一貫性):チーズプラス
大手店舗での例:くら寿司
BtoB
BtoCに比べると対象となるユーザーが限られるため、綿密なマーケティング設計を経て運用する必要があります。コアなユーザーに向けた専門性の高い情報配信コンテンツが良いでしょう。
縦型ショート動画は万人に受ける動画でフォロワーを獲得していくのが基本です。一方でBtoBは専門的であるため、万人に受けることはありません。しかし、フォロワーが多いことによって認知されたり、界隈での権威性を高めたりすることはできます。またブランディングもできるため、上手に活用してみましょう。
BtoBtoC
仲介を経て消費者に物品を販売するケースでは、BtoCと同様の発想で運用することがおすすめです。一方で、仲介となる企業向けにも信用を勝ち取るためには、YouTubeの長尺動画などで専門的な解説動画を投稿するとよいでしょう。
こちらはBtoBtoCのショート動画の例です。どのような戦略が用いられているのか、考察しながら視聴してみてください。
防音予備校
採用
上記の4ジャンルと比較して、難易度は高めです。TikTok経由で人材を採用をするためには、最低でも動画が数万〜数十万回再生されていることが必要でしょう。それに加えて、各動画で採用活動をしている旨をCTAとして取り込む必要があります。
自社の宣伝は極力控え、自社の特徴を入れつつ、コンテンツとしてユニークな動画シリーズを投稿しましょう。
社員紹介・会社文化紹介のアーカイブとして利用するのにはおすすめです。社員が辞めない限りは数年間に渡り利用ができ、コンパクトなネタで就活生や就活者とコミュニケーションが取れます。
以下は採用のショート動画の例です。興味のある方はチェックしてみてください。
ユイカとヒロシ
大京警備保障
作り方
動画の窓口では以下の5つに重点を置いて、SNSショート動画の企画設定を行なっています。
- 世界観(ブランディングイメージ)
- ターゲット設計
- シリーズ性
- 視聴されやすいコンテンツ
- コラボ性
それぞれの重点について簡単に解説します。これからショート動画を始める方は、この5点を意識して動画を作成しましょう。
世界観(ブランディングイメージ)
まずは、サービスや企業・登場人物が持つ一貫した世界観を設定します。
- 口癖
- 見た目の特徴
- キャラクター
- ロケーション
- ギャップ
- 持ちネタ
- 扱うアイテム
以上のように、2回目、3回目に視聴した際に思い出してもらえるような、視聴者と共通のコミュニケーションイメージを盛り込みましょう。
ターゲット設計
次に、どのような人物から視聴してもらいたいのかを定めます。
- 性別
- 年齢
- 趣味・興味
- 仕事・特技
以上のような大まかな要素から決めましょう。ただしSNSショート動画は拡散性が重要なため、コアなターゲットに絞りすぎないように注意しましょう。
シリーズ性
SNS縦型ショート動画は動画コンテンツとはいえ、あくまでSNSです。質よりも量を重視するほうが効果的です。例えば、1ヵ月かけて大作を1つ作るよりも、クオリティを妥協してでも1ヵ月に1日1作品ずつ制作したほうが効果的でしょう。
その際に障壁となるのが「企画考案」です。シリーズものとして、何か些細な部分を変えることで簡単に企画化できるネタを考案することが重要です。
また、その際には1つあたりの撮影のコストパフォーマンスを意識し、時間や費用がかかりすぎないように注意しましょう。
こちらは、シリーズもののショート動画の例です。「焼きネタを変えるだけ」というシンプルで汎用性高いシリーズとなっているので、ぜひ確認してみてください。
究極の一本シリーズ
視聴されやすいコンテンツ
視聴されやすいコンテンツにはいくつもの要素があります。詳しくは実践編で解説するので、ここでは以下の例をそれぞれ簡単に紹介します。
- ビッグネーム
- 流行りネタ
- インパクトコピー
- ノウハウ
- コメント欄を活用したユーザーコミュニケーション
- ギミック
- 構成
<ビッグネーム>
流行りのワードや有名ブランド、有名人を冒頭に出すことで視聴者の興味を引きます。
<流行りネタ>
ハッシュタグや検索ワードで流行りのネタを模倣することで、視聴者の興味を引きます。ただし、視聴対象としたユーザー以外も多く視聴する場合があるので注意しましょう。
<インパクトコピー>
視聴者の興味を引くインパクトコピーをタイトルに入れることで、視聴者の興味を引くことができます。
- 「絶対にやってはいけない◯◯」
- 「凄すぎる◯◯」
- 「美人すぎる◯◯」
- 「脅威の◯◯力」
- 「これなんだ?」
- 「みんなはどう思う?」
聞いたことがあるフレーズがあるのではないでしょうか。
<ノウハウ>
- 「◯◯な人にやってほしい△△」
- 「本当は教えてたくない◯◯の裏技5選」
このように、自分の持っているノウハウを公開することで視聴者の興味を引きましょう。
<コメント欄を活用したユーザーコミュニケーション>
コメント欄を開くと視聴者の動画滞在時間が増えるためバズりやすく、おすすめに表示されやすいと考えられています。
- 「詳しくはコメント欄で」
- 「答えは…コメント欄をチェック!」
コメントを覗きたくなるような文章で、視聴者を誘導しましょう。
<ギミック>
タイミングよく動画を静止するとおもしろい画像が表示されます。占いなどの気になる文章を静止画で表示させて、延々と動画ループさせましょう。
「この動画の秘密みんなはわかった?」など。このように特殊な方法で、視聴維持率や再生回数を増やすテクニックもあります。
<構成>
重要比は以下の通りです。
冒頭>終わり方>中盤
・冒頭
冒頭の2秒〜4秒で視聴者に見たいと思わせられるかどうか、がもっとも重要です。同じ再生回数の動画を比較した時、再生時間によって冒頭の試聴維持率に差があります。以下は同じ再生回数で再生時間の違う動画の視聴維持率の違いです。
17秒の動画は冒頭4秒の視聴維持率は60%近くであり、最後まで視聴された割合がおよそ50%となっている。
48秒の動画は冒頭4秒の視聴維持率が47%となっており、最後まで視聴された割合はおよそ10%となっている。
・終わり方
キレのよい終わり方も重要ですが、視聴者に疑問を抱かせたり、モヤっとするところや、面白いところで突然終わらせたりする作戦もあります。だらけない終わり方をすることで、視聴者を動画の2周目に突入させ、完全視聴率を高めましょう。
・中盤
冒頭で伝えたタイトルやそこから期待できる答えが、ジリジリとわかる内容にするとよいでしょう。コントなど掛け合いの場合は、できるだけ無駄なセリフを省いて、滑り台を降りるようにオチに進める必要があり「編集力」が試される部分でもあります。
こちらは構成が上手なショート動画の例です。最後まで見たくなるような構成になっているので、視聴してみてください。
りんりんどう大福「これなに」
コラボ性
上記の1〜4が確立し、数万再生を連発できるようになったら、さまざまなユーザーにコラボを持ちかけましょう。新たなフォロワーを発掘でき、今まで届けることができなかったユーザーにPRができます。
その際に重要なことは、同業者ではなく「同様の視聴ユーザーを抱えた他業者」とコラボを試みることです。お互いにメリットを享受できるのでおすすめです。
まずはやってみよう!
SNSのショート動画の作り方や活用方法を理解できたでしょうか。先述したように、はじめは深いことを考えずにとにかくやってみるのがおすすめです。
実践しないことには、自分の動画がどのSNSで伸びやすいのか、どの媒体と相性がよいのかということもわかりません。
誰でも始める前は初心者です。まずは再生回数やクオリティは気にせず、軽く楽しむ感覚でやってみましょう。