今回は「本当にあった動画制作体験談」という企画で、年間200本を超える企業動画をプロデュース・制作されている池上さんにお話を伺いました。
ー実際に経験した「思い出の案件」についてお話いただきたいのですが、覚悟はよろしいでしょうか?
動画コンシェルジュ・池上(以下「池上」):覚悟と言われると少し重いですね(笑)。事実しかお話しできませんが、それでもよければ何でも聞いてください。
ーありがとうございます。それでは早速インタビューに入らせていただきます。

この記事の監修者

「動画の窓口®️」動画コンシェルジュ
池上 和
不動産営業マンから動画クリエイターに転身。現在は動画コンシェルジュ。 『動画の窓口®︎』プロデューサー。企業動画を年間約1,000本プロデュース&制作している。動画の窓口株式会社社長。合同会社イエロー代表。動画フリーランスコミュニティ「若羽-wakabane-」創業者。
目次
お急ぎ制作とは?
ー池上さんや動画の窓口が得意としている「短納期動画制作」に関する思い出についてお話いただきたいのですが、その前にお急ぎでも納品を可能にする「短納期動画制作」とはどのようなものかご説明いただけますか?
池上:「短納期動画制作」とは、文字通り早く動画を制作できるサービスです。主に企業のイベントや社内プレゼンなど、急きょ動画が必要になるシーンで、駆け込み寺のようにお使いいただいています。
弊社では「動画の窓口Express」という独自の短納期動画制作サービスがあり、お急ぎの案件に年間何十件も対応させていただいています。
今回はそのような制作案件の中から「社運をかけた重要な動画を約10日で納品した事例」についてお話しようと思います。
ー10日間となるとかなりタイトなスケジュールになりますね。
池上:そうですね。10日間といっても発注から納品までの期間だったので、実際に制作していた期間はもっと短くなると思います。
ご依頼をいただいたその日にすぐお客さまのもとを訪問し、打ち合わせをしました。
時間がないのはご依頼の時点でお聞きしていたので、その場で関係者の方と話し合いながら画面デザインや制作スケジュールの共有を行いました。
本当に社運をかけていたので、間に合わないとまずい案件でした。
とある企業さまが大規模展示会に出展する際に、自社サービスの動画をブースで流そうという話が急きょ立ち上がり、制作をすることになった事例です。
今回体験談をさせていただくのは、スキャンマン株式会社さまの事例になります。
実際の制作時間について
ー10日で制作はあまりにも早すぎる気がするのですが、クオリティに妥協された点があったのでしょうか?
池上:そんなことはありません。
お客さまにも「10日で制作したとは思えない出来栄え」と喜んでいただけましたし、本来であれば2ヵ月程度かかってもおかしくないクオリティに仕上がりました。
以下は実際に制作した動画です。
※動画の窓口Express制作
ー動画を制作する際にはそもそも企画に時間がかかると思いますが、その案件では企画段階に割く時間はあったのでしょうか?
池上:企画に割く時間はありませんでした。しかし、企画が始まらなければ作業が進みません。
サービス紹介や会社紹介、採用などの動画には1つのメソッドがあります。それは、「字コンテ(脚本)」です。
字コンテがすべてであり、それさえできれば、イメージを作って動かしていくだけになります。
そして実はこの字コンテが1番難しいんです。弊社は企業理解やサービス理解について、お客さまからヒヤリングして反映する点に強みがあります。
この案件ではお客さまとはじめて打ち合わせをした際に、その場で30分程度で3分ほどの字コンテを作成しました。字コンテがベースとしてあれば、イメージと違った場合にお客さまも修正しやすくなります。
動画の窓口ではこの字コンテをベースワンと呼んでいます。別の言葉で言うと「たたき台」のようなものです。
動画制作をおこなう場合、大半の制作会社が絵作りから考えます。しかし、動画の窓口では字コンテを先に共有することにより、早い段階での修正を可能にしています。
ー修正が多くなると時間がたくさんかかる気がするのですが…
動画の窓口Expressでは、こうした短納期の案件に備え、「アジャイル方式」という形式をとっています。
アジャイル方式は、お客さまからのフィードバックを受けながら、最終決定になるまでその都度変更を加える手法です。
通常の動画制作は、9割程度完成した後に提出するので、イメージが違った場合に修正リスクや修正コストが高くなりがちです。
一方アジャイル方式は、定期的に進捗状況を共有することで修正の無駄を省き、修正リスクや修正コストを大幅にカットしています。
このアジャイル方式が、わたしたちが短納期で動画制作が可能な理由の1つです。
ー制作の際には決裁に時間がかかって遅れるケースも考えられると思いますが、どのように工夫されているのですか?
池上:社内の決裁ルートや、「最終的にOKを出す人を決定して欲しいということ」を念入りに話しています。
そうしないと、完成目前に鶴の一声でひっくり返ることがあるので…。
最終段階での大きな変更は望ましくないですし、決定されないまま進むことは避けたいので、スタートの時点で最終決定権を持つ人物を定めていますね。
社長さんを含めた決裁担当の方々を巻き込みながら企画会議をして、すばやく確認をとりながら内容をつめていき、数日間で構成を練り上げられました。
また、関係者全員が情報を見れるようにスプレッドシートにまとめることで、複数の人が修正指示をいれられるようにしています。
適宜社内で手直ししてもらうことが、効率化につながっています。

ーこの案件はイラストアニメーションを使用した動画とのことでしたので、細かな編集に時間がかかりそうな印象を受けました。時間短縮のために工夫されたことはありますでしょうか?
池上:発注サイドと制作サイドで、1日1〜2回進捗確認のミーティングを行い、認識の違いが生じないようにしました。
実は動画制作において時間がかかるのは制作の段階よりも修正段階なんです。制作を早くするためのポイントは寝ずに作ることでも、クオリティに妥協をすることでもありません。
修正を少なくすることができれば、かなり納期を短縮できます。この案件では修正がそもそも発生しないよう、関係者との調整を綿密に進めました。
メールやチャットだとどうしても連絡のラグが出てきたり、文章を打つのが大変だったりします。1時間のMTGだと1万8000文字相当の情報でコミュニケーションがとれるので、納期がシビアな状況ほど、直接MTGを何度もします。
さらに役割分担をして、複数人で1つの動画を制作することで、時間を短縮しました。
制作にかかわる人数について
ーちなみに、この動画の制作には何人が携わったのでしょうか?
池上:私を含め4人です。構成や字コンテは私がプロデュースしました。時間に余裕がある場合は「ラフコンテ」と呼んでいる簡易的な映像イメージを作成する場合もあります。
今回は時間がなかったので、「デザインを作成しモーションをつける」という作業を繰り返しました。
絵コンテが1人、アニメーション(動き)をつける担当者が2人という構成で進めました。これを1人でしようと思うと、およそ3倍の時間がかかりますね。
お互いに信頼し合えるクリエイターがたくさんいる動画の窓口だからこそ、スムーズな連携がとれています。
納期について
ー納品時には納期にどれくらいの余裕があったのでしょうか?
池上:実際は8日程度で完成しました。修正はギリギリまでウェルカムの姿勢をとっています。フォントを変えたり、色を変えたり。納品直前にこだわりが増えるケースもよくあるので。
動画の窓口 Expressのスタンスとして「これでいいより、これがいいを追求する」というものを掲げています。
そのため、内容が魅力的に伝えられるよう、ギリギリまで制作の手を止めることはありません。
「反映できなければ大丈夫ですが…」と半ば諦めたような修正のご依頼をいただくこともありますが、100%対応しています。
本当のデッドラインまで、妥協をすることはありません。

ー品質に妥協しないことこそが、動画の窓口 Expressの最大の売りということですね。
池上:その通りです。急いでいるからといって品質を下げることはしたくないと思っているので、ギリギリまでお客さまが求める動画を追求します。
お客さまファーストの姿勢で仕事をしているので、動画の窓口 Expressでは品質も犠牲にしません。
動画の窓口Expressの強みは?
ー他に、動画の窓口Expressの強みはありますでしょうか?
池上:圧倒的な経験と連携力です。多くの制作会社や広告代理店では、そもそもお急ぎ案件に対しての制作システムが確立していません。
大半の動画制作会社では、案件ごとにはじめましてのフリーランス編集者を探してくる方法がとられています。
しかし、弊社は常に50人以上の動画編集者の方が所属しているので、案件ごとに新規で探す必要はありません。
顔見知りのため連携が取りやすく、作業の時間短縮にもつながっています。
通常の案件では「その都度動画編集者を探す手法」で間に合うかもしれませんが、納期が刻一刻と迫っている状況では、連携の遅れが命取りになるでしょう。
そうした状況では、わたしたちの強みが発揮されると考えています。
わたしたちは100種類以上のお急ぎ案件に対応してきました。そこで培ったノウハウや連携力は、短納期案件のためにあると言っても過言ではありません。
ー動画の窓口チームだからこそ、早さと質の両立ができるのですね。
池上:はい。苦楽を共にした大事な仲間どうしで制作しています。
動画制作の時間が足りなくなるケースがある?
ーしかしそうした中でも、時間が足りなくなってしまうケースはないのでしょうか。
池上:基本的にはありません。納期に絶対に間に合わせることがお客さまへの信頼の証だと思っているからです。
ただし、例外もあります。書き出し時間の都合上、物理的に時間が足りないことはあります。
例えば3Dグラフィックを使った動画の場合、書き出しのプロセスに10時間以上かかるケースもあります。物理的な問題で時間が足りないと判断した場合は、基本的にお断りさせていただいております。
また、3Dグラフィックを使わなくても、動画の長さが30分を超える場合には書き出しに1時間以上を要してしまいます。本当にギリギリの場合での修正対応は厳しいですね。
修正対応が厳しい場合は、動画の投稿文に注釈を加えることで、視聴者に正確な情報伝達ができるようにフォローさせていただいております。
あとは直前になって動画の方向性が大きく変わってしまうと対応に苦慮すると思いますが、今までそうした理由で納期に間に合わなかったことはありません。
そもそも大幅な変更が必要にならないように、制作を進めていくのもわたしたちの大切な仕事だと思っています。
ーそうなるとやはり、最終納期を見据え、逆算してできることを考える必要があるんですね。
池上:そうですね。最初の段階で、納期に合わせてすべてのMTGを事前にブッキングしておきます。「誰が」「いつまでに」「何をする」ということを、お客さまのタスクも含めて全員が可視化できるように、クラウドシステムを活用してスケジュールを組んでいます。
そうすることで部署や役職の異なるご担当者さまが、常に進捗を確認できる環境を整えているのです。
「本当の」デッドラインを明確にできれば、とれる手段の選択肢も増えます。限られた時間内でもできる限り最大限のことをさせていただくので、諦めずご相談していただきたいと思っています。
絶対に納期に間に合わせるという前提で、クオリティにも妥協はしません。
急ぎ案件の需要について
ーちなみに、今回のようなお急ぎの動画制作案件は多いのでしょうか?
池上:お急ぎ案件のご依頼はとても多いです。特に新しい製品やビジネスプランのプレゼンテーションについての制作依頼が多いように感じますね。
ビジュアルとわかりやすさを両立した、最善の手段が動画だと考える方が増えたのではないでしょうか。
また、今回のようにイベントや展示会で急きょ動画を使いたいというご依頼も非常に多いです。お急ぎの制作案件はベンチャー企業さまでも大手企業さまでも少なくありません。
ーなるほど。実際に発注いただいたお客様からはどのような声が上がっているのでしょうか?
池上:主に2点を評価していただいており、1つ目は品質についてですね。
短納期だからといってクオリティに妥協せず、お客さまの想像をこえる出来栄えの動画を制作しているので、満足していただいています。
実際「良いものをギリギリまで制作いただけて良かったです」との声をいただき、同じお客さまから再度ご依頼をいただいたこともあります。
もう1つは制作プログラムについてです。制作工程が可視化されていることで、進め方がわかりやすかったという感想をたくさんいただいております。
プロであるわたしたちがリードすることで不安を解消し、お客さまと一体となって進めているので、お客さまにもその気持ちが伝わって本当に嬉しかったのを今でも覚えています。
最後に
ー最後に、お急ぎで動画が必要な企業さまにひとことお願いします。
池上:現代では本当に多種多様なシーンで急きょ動画が必要になることがあると思います。
他社では対応できないようなお急ぎの案件でも、わたしたちであれば対応可能な場合がほとんどです。
パソコンを持ってお客さま先に訪問し、その場で編集するという最終兵器もあります。時間がなくても諦めなくて大丈夫です。方法を模索すれば必ず道は開けるので、ぜひ私たちにご相談ください!
ー今日はお話いただき、ありがとうございました!